診療契約の成立
診療契約は、患者が診察・診断・治療などを求めて病院を訪れ、医療側が患者の求めに応じて診察をはじめれば、成立したといえます。
契約の当事者は、患者本人(患者が未成年の場合には親)と、開業医の場合には医師個人との間に成立し、病院の場合には病院設置者との間に成立します。
ですから、開業医の場合には、医師個人が、病院の場合には病院の設置者が診療契約上の法的責任を負うことになるのです。
診療契約が成立した後、つまり患者が治療の途中で意識を失った場合には、既に成立している診療契約はどのようになるのでしょうか。
医療を受けるのは患者本人であること、最初の診察の段階で患者に対し病気を診察治療することを医師が約束していることを考えると、医師あるいは病院と患者との診療契約が継続していると考えて問題ありません。
では、患者が診察を受ける段階で既に意識がない場合には患者本人が申込みを行うことがないので、医師あるいは病院との間で診療契約が成立していると言えるのでしょうか。
この場合、配偶者や近親者がいるような場合には、その方に日常生活を営む上で必要な代理権が与えられていると考えられますので、配偶者や近親者を代理人として、患者本人と医師あるいは病院設置者との間で診療契約が成立しているといえます。
近親者の方がおらず、近所の方や通りすがりの方が患者を連れてきた場合には、どのように考えればよいのでしょうか。
通常、近所の方や通りすがりの方は、病院などに連れてくる意思はあったとしても、治療費を負担する意思まであるか疑問ではありますが、近所の方や通りすがりの方と医師や病院設置者との間に、患者のためにする診療契約が成立していると考えざるを得ないのではないでしょうか。