治療不実施型
原因の主張・立証
まず、治療不実施型では、基礎疾患が悪化、重篤化した、あるいは合併症が併発したことを主張・立証することになります。
ここで、注意が必要なのは、基礎疾患の悪化、重篤化、合併症の併発が、単に感覚的なものとして推測できるというレベルのものではなく、医学的な裏付けが必要になるという点です。
医療側としては、基礎疾患と悪化・重篤化、あるいは併発した合併症との関係が不明であるという反論や、現在の病状や合併症は基礎疾患とは異なる他の原因によるものであるという反論を行ってきます。基礎疾患が悪化・重篤化した、あるいは合併症が併発したことを主張・立証する場合には、これらの反論を乗り越えることができる医学的根拠がなければならないのです。
予見・結果回避可能性、過失の立証
次に、基礎疾患に対して適切な診察、診断、治療を行っていれば、基礎疾患が悪化・重篤化する、あるいは合併症の併発を回避することができたこと、基礎疾患が悪化・重篤化する、あるいは合併症の併発を予見することができたことを、可能な限り時期を特定して主張・立証することで、医療側の診察・診断義務違反、治療義務違反を主張していくことになります。
ここで問題となるのが、医療過誤が発生した当時の医療水準や、そもそも医師に認められている裁量の範囲です。
当事の医療水準であれば、基礎疾患が悪化・重篤化する、あるいは合併症の併発を回避すること、あるいは予見することができたかということが問題となるのです。
また、当時の医療慣行であれば、病状を観察することも医師の判断としてあり得ることか否かという点も問題となります。